急な転勤での礼金返還
Q.
私は、1年間の期間で建物を借り、12万円の礼金を支払いましたが、急な転勤が決まってしまい、入居後1ヶ月で退居を余儀なくされました。支払った礼金は返ってくるのでしょうか?
A.
一部返還される可能性があります。前回、敷金は原則返還されることを説明しましたが、「礼金」は一般的には返還されません。
まず、「礼金」とは、建物賃貸借契約を締結した際に最初に貸主(家主)に礼金を支払う特約がある場合に限り支払う金銭です。返還されない理由としては、礼金が家主に建物を借りる際にまさにお礼として金銭を支払っていたことが慣習化した結果、契約書に礼金の支払い義務と礼金が返還されないとの条項が記載されるようになったためです。
しかし、ご相談のように予定する賃貸期間より短期に契約が終了する場合には、礼金が、賃料の前払いとしての性質も一部有するとして、礼金の返還が認められたとの判例があります。ただし、前述のとおりお礼としての性質もあるため、礼金全額の返還は認められず、退居までの期間分を控除した額として今回の場合、10万円程度の返還を受ける可能性があります。
ちなみに礼金の特約は、契約の重要事項となるため家主は説明をする義務があります。しかし借主が説明を受けていない、礼金の性質を知らなかった際に争いとなる場合があります。このため、トラブルを未然に防ぐためにも、契約書作成時において、礼金の性質についてきちんと確認しておくことが望ましいと考えます。